私と日本

大きなスーツケースを引きずって、成田空港の電車乗り場でうろうろして、行き交う人々の口からこぼれる日本語を耳にして初めて、再び日本の土地に立ったという実感が湧いてきた。

前回日本に行ったのは三年前のことだった。あの頃の私はまだ日本語を流暢に話せず、中國と異なる習慣にも慣れず、異郷感満載の日本社會で窮屈さを感じていた。そして何よりも、淺草寺で思いもよらず「兇」のおみくじを引いてしまったのがショックだった。おみくじの結果など、単なる偶然に過ぎないけれど、數々の小さな失敗が積み重なって、挫折感に変わり、じわじわと心を侵食していった。日本という國は私にやさしくないんだなあと思わずにはいられなかった。これから大學で四年間も日本語を勉強しなければいけないと考えると、うまくいくのだろうかと、不安でならなかった。

だけど、そんな不安の裏返しに、今までの日本語の勉強は順調だっただけでなく、楽しささえも感じていた。おみくじの恨みがあるにもかかわらず、言葉の勉強を通じ、日本という國を知れば知るほど好きになってきた。

そして今度、大學の卒業を控えて、私はまた日本へ旅立った。前回と比べ、さすがにもう言葉に問題はなく、エスカレーターで左に立つなどのルールにももう戸惑わない。前回より自由に行動できる旅行は楽しい。だがしかし、一つだけ気になることがあった。時に流されすでに色褪せて気にしなくなったかと思っていた「兇」事件である。長谷寺のあの立派な観音像の前のおみくじ箱を見たとたん、ふと思い出してしまったのだ。リベンジするなら、今だ。

そう思い、両手を合わせ、目の前の観音様に靜かに祈った。そうしたら、妙に緊張し始めた。三年間、日本語を習い続け、日本人と何人か知り合いになり、それで日本を知ったつもりになった私を、日本は受け入れてくれるだろうか。超自然的力に求めるのは理屈に合わないけれど、答えがこれから引くおみくじに宿っている気がした。期待の分だけ不安も大きかった。もし今度も兇が出てきてしまったら、心が折れそう。

やっと心を決め、私は深呼吸をして、手をおみくじ箱へ伸ばした。微かに震えながら、手に取った紙を開いて目を凝らしてみたら、

「長谷寺観音御鬮 第六十八 吉」

と大きく書いてあった。

一瞬、呼吸を忘れた。だけど、予想していた喜びはなかった。代わりに、満足なのか安堵なのか、形容しようがない、喜びよりも暖かい気持ちが胸いっぱいに満ちた。

思えば、私は子供の頃からずっと、日本に魅せられてきた。最初はアニメに惹きつけられ、それをきっかけに日本語の獨學をはじめ、そのうち、なんと日本語が専門になってしまって、そして今は日本への留學を目指している。適切な喩えかどうかわからないけれど、まるで日本に長い間片想いをしてきたようだ。そんな風に追い続づけてきた日本がようやく振り向いてくれた、努力が報われたんだなあ、と。

しばらくそんな思いにふけった後、私は観音様に深く一禮をし、長谷寺を去った。

帰國したら、二度目の日本旅行が幕を閉じるけれど、私と日本の関係はこれで終わりではない。これからも長い間、日本とお付き合いしていくのだろう。この一枚の籤を節目に、何か新しいことを始めたい。一方的に日本を追うのではなく、些細な事でもいいから、日本に何か影響を與えよう。周りの日本人に本當の中國を知ってもらって、そして私が日本を知ることで好きになったように、中國のことを好きになってもらえたら、「吉」を引くこと以上に満たされるだろう。

そんな自分を勵ますため、最後に籤の文章を記しておこう。

「異夢生英傑 前來事可疑 芳菲春日暖 依舊発殘枝」

(大意:あの悪夢はいったい何だったのだろうか、花の香りが春の暖かさに満ちて、枯れた木にも花が咲いている。)

 

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